日本の左派政党と国際基準
今回の第45回総選挙はネット右翼の敗北でもあったが、あれだけ児童ポルノを熱心に語っていたネット左翼の意見が日本国民の投票行動にあらわれなかった面を見ても、ネット左翼の敗北でもあった。保坂展人の落選でも明らかだし、さらには、あれだけ貧困問題が言われながらも社民党の議席が全く伸びずに、まさに結成まもないみんなの党の躍進に追跡され追い越される勢いであることを考えても、ネット左翼の意見も日本国民には届かなかった。
※ 社民党は、1999年の労働者派遣法の改正に党として賛成しておきながら、自らの社民党こそが派遣労働者たちの労働問題を考えてきたとかいい加減で調子のいいことを言ってきた。
ネット上で児童ポルノの単純所持禁止に反対だから民主党に投票すると言っていた者たちは、民主党に何を期待しているのか。民主党はただの寄り合い政党にすぎないし、児童ポルノの単純所持禁止反対に関して、ネット左翼が言うように動く根拠もないし、実際の民主党の動きを見てもそうである。
児童ポルノの問題で言えば、まともな左派政党が日本に育たなかったことに問題がある。社民党がまともな左派政党であるというのは、日本社会党の歴史を考えれば完全な間違いである。社会党がどういう歴史を刻んで日本国民から相手にされなくなったのかは、原彬久『戦後史のなかの日本社会党―その理想主義とは何であったのか』(中公新書)にある。
社民党はその崩壊した社会党の残骸政党にすぎず、社会主義インターナショナルの考えに近かった民社党が社会党から飛び出し、左派からは新社会党が結成し、そんな社民党に「社民党は左派政党だから」児童ポルノ法案で頑張れという声を見ていると、日本でまともな左派政党が育つのはいつのことだろうかと思えてくる。
児童ポルノの単純所持禁止の基準は、国際的に見ておかしいなどの批判があるのは当然でその通りだ。しかし、外国人参政権という日本国民の要件に関わることでも、国際基準で賛成の議論が進んでいるわけではない。児童ポルノで国際基準が必要としながら、外国人参政権では国際基準は関係ないから賛成しろとかいい加減なことを言うから、ネット左翼の意見は日本国民から遠のいていくばかりで熱烈な応援議員は落選し、ネット右翼と同じ憂き目に合う。
国際基準で言うのなら、児童ポルノも外国人参政権もどちらも日本の進み方はおかしいのであって、そのとどちらも批判しないといけない。国際基準を通すと、社会主義インターでの社会党のズレを修正し社会党が国防論を言わないといけなかったが社会党左派はそんなことを言えなかったし、社会党で左派が実権を握ったために国際基準と合致しないでガタガタの理論のまま社会党の崩壊に向かった。
国民政党に向かおうとした社会党内部の者たちが社会党から追い出され民社党になり、階級政党であるとした左派たちが社会党を牛耳り、それが日本の野党第一党の「左派」政党になって存在していった。日本の土壌に社民主義を根付かせるのではなく、社民主義から逸脱したまさに島国日本の保守的政党の社会党が「左派」であるとして国民から乖離した結果に、日本国民が左派を信頼しなくなってしまった。日本の海を越えると、そこにはどんな社民主義があるのかも理解できなかった(※西ドイツ社民党の1959年1月のゴーデスベルク綱領)。
社民主義の左派政党で、国防論を当然に主張し、外国人参政権など日本国民の要件に関わることで国益を考え、外国人参政権の付与をしているとされる国では実は制限をしていることをしっかりと調査すること、児童ポルノの単純所持禁止を表現の自由への規制であると批判して児童ポルノの定義もしっかりと議論できることなどの左派政党がしっかりと存在すれば、日本国民から国民政党であると支持されるだろうが、こういう政党が日本で結成されるのだろうか。
児童ポルノ法案の問題でも、日本国民(少数派のネット右翼やネット左翼ではなく)の信頼に足りる国民政党である社民主義の左派政党が存在すれば、その定義もしっかりと議論するのではないのか。児童ポルノで国際基準を盛んに言っているネット左翼は、外国人参政権では国際的視野が全く足りないでいい加減なことばかりを言っている。こういう変な左派が日本に多いから戦後の日本は自民党という保守政権の国であり、社会党は極少数の例外を除いて野党であって崩壊し、民主党の支持率がどんどん落ちている現状では、再び自民党が政権与党になるだろうか。これが日本国民の判断で、それを馬鹿と日本の左派たちは言えない。国際的視野に立った国民政党である社民主義政党を結成できなかった日本の左派の問題である。
日本共産党が共産主義を標榜し、極左冒険主義という戦後日本の政党史に残るとんでもない大問題を起こし、国防問題で非現実的なことばかりを言い、国民政党では全くない万年野党であることを考えると、国際的視野に立った社民主義政党を結成しそれが国民政党にならないと、児童ポルノ法案のようなネット左翼が吹き上がる問題は起こり続ける。法案を通すのは政権与党であって、野党ではない。この基本中の基本を考えると、国民政党になる社民主義政党が日本にできないと結局ネット左翼の言っていることも通らないのに、ネット左翼にとっては思想などどうでもいいのだろう。
2009年11月掲載