男性過労死を放置してきた因果

ワタミで女性(=森美菜)が過労自殺したことが問題になっている。この女性は26歳だった。この過労自殺で、女性にまで過労死させる会社とか、女性にまで過労死させる残酷な社会といった反応が見られることに非常に問題がある。そもそも、過労死の大半は男性である。その男性過労死を放置してきたことで、女性も男性並に働くように向かってしまうのだ。

育児の問題を見ても分かる。母親が子供を殺した時でさえ、母親の育児ノイローゼがどれだけ辛いか分からない夫が悪い、夫も同罪といった意見が多く出る。しかし、日本の夫は過労死予備軍も含めると長時間労働で育児をする時間がそもそもないことが多い。であるにも関わらずに、育児の時間を夫も取れと夫に責任を求める。

こういう夫が過労死予備軍であることが多いことなど一切考えないで、夫に一方的に責め立ててきた因果が、女性の過労死にも向かわせる社会になっているのだ。育児を夫もするべきと言う時には、その前に、過労死予備軍の比重が男性にあまりに偏っている状況を改善するのが先だ。男が過労死することなんかどうでもいいと放置すると、女にも過労死を求める社会になる。

そして、大半が男性の過労死であるにも関わらずに、女性が過労死した時には大問題になるのもおかしい。これは、他の例で言えば、セクハラがある。中年女性が若年男性にセクハラする構図は、世の中にかなりある。これは、過労死での女性の割合よりかなり多い。にも関わらずに、セクハラで女性が加害者側になることを言うと、女性が受けるセクハラを無視するのかという反対意見が必ず多く出る。

であるなら、過労死で女性の場合には重視するほうがさらに大問題だ。セクハラよりも、人権で最重要項目の人命が奪われる過労死のほうが人権侵害の程度が相当に酷いからだ。男女の自殺率格差とジェンダー:女性が周縁・他者になる理由に書いたこととも似ている。自殺率では男性のほうが高いのに、女性が自殺する時のほうが大問題になる。

クロ現「助けてと言えなくて~女性たちに何が~」の偏向性では、自殺未遂をする女性のほうが多いことを強調して、女性がどれだけ社会で酷な目にあっているかを言っていた。ここでも、実際の自殺率の男女比を無視して、女性の「被害」ばかりを強調していた。こういう男性の死を虫けらみたいに扱う社会は、その社会に女性が入り込むようになると、女性にも適用されてしまうことを理解していない。

女性が過労死することから救済するためには、まずは、男性過労死が大半な状況に対策をすることだ。

反省の女性学とはに、当サイトの反省の女性学の趣旨を書いています。

2015年12月掲載



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