女性参政権の制限の期間と25歳未満の男子の制限
日本の女性参政権の話題になると、「ニュージーランドでは1893年に女性参政権が実現したのに、日本に至ってはそれから50年以上経った戦後のこと」などのことが言われる。これは、日本の女性参政権の実現の日付を単純に見ているだけにすぎない。日本の1889年当時の選挙法による全人口の有権者数の割合は1.1%で、男子普通選挙も相当に制限されていて、それも合わせてニュージーランドの1893年のことを考えないといけない。
1925年の男子普通選挙から、1945年の女子普通選挙までの期間は20年である。日本の女性参政権の制限と抑圧の期間は、20年ということになる。1879年のニュージーランドの男子普通選挙から、1893年の女子普通選挙までの期間は14年である。ニュージーランドの女性参政権の制限と抑圧の期間は、14年ということになる。ニュージーランドの制限の期間と日本の制限の期間は、それほど変わらない。
女性参政権問題の際に、単純な女性参政権の日付だけを並べてこの国のほうが早いとか遅いとか言うのではなく、この女性参政権の制限の期間でも国際比較をしないと意味がない。日本の選挙権の歴史をさらに詳しく見ると、戦前の男子普通選挙も制限されていたことが分かる。
戦前の男子普通選挙が実施されたのは、1925年だと言われている。そして、1945年に女子普通選挙が実施されたと言われている。それで、やっと男女平等になったと言われている。これは正確に言えば、間違いだ。
戦前の1925年の男子普通選挙によって実現したのは「25歳以上の男子」に対する選挙権で、戦後の1945年の普通選挙で「20歳以上の男女」に選挙権が与えられた。戦前の25歳未満の男子は女子の選挙権と同じく制限されていて、戦後になって初めて選挙権が与えられたことを考えると、単純に女子の選挙権だけが制限されていたと言うことはできない。20歳以上の完全普通選挙という意味で言えば、男子普通選挙も戦後になって初めて実現したことになる。
日本の女性参政権に対する制限の期間が20年というのは、特にフランスやスイスと比べるとその短さが分かる。さらには、実は戦前の男子普通選挙権でも、25歳未満の男子は女子と同じく制限されていたとなれば、日本の女性参政権の話題で飛び交っている俗説は、かなりの間違いを含んでいることが分かる。
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2009年11月掲載
《追記》
性別だけで選挙権が制限されてきたのは間違いだ。障害者は、戦前も戦後も選挙権が制限されてきたので、最も選挙権が制限されてきたのは、健常者の女性ではなく、障害者である。健常者の女性が戦後に男性と同じ選挙権を得たのは、それは健常者の女性であったからだ。健常者の女性に比べれば、障害者は二級市民以下である。健常者の女性が、私たち女こそが選挙権が制限されてきたと障害者の存在を抹消する健常者至上主義が蔓延している。
選挙権の制限は、性別ではなく、欠格条項に該当するかどうかで制限されてきたと見るのが正しい。