元祖長浜屋というラーメン
元祖ラーメン長浜家が開店しました。長浜家は元祖長浜屋の元従業員の店で、ラーメンや店内の雰囲気までも元祖長浜屋とほとんど同じです。
元祖ラーメン長浜家:長浜家に元祖長浜屋本店を見る 福岡博多のソウルフード
以下の文章は、以前の元祖長浜屋支店があった時のことです。今はその元祖長浜屋支店はすぐ近くに移転しましたが元祖長浜屋の性格は健在ですので、以下に書いたことも健在です。
元祖長浜屋は、替玉の発祥の店と言われています。今ある元祖長浜屋は元の支店で、本店のほうは閉店になりました。元祖長浜屋が閉店か休業かと言われたときには、『西日本新聞』の夕刊にも載りました。味のマルタイから「元祖ラーメン長浜屋協力 豚骨ラーメン」のカップ麺と「元祖長浜屋協力 棒ラーメン」も発売されました。
今ある支店は那の津通りに面していて、本店は那の津通りから少し道を入ったところにありました。厳密な住所で言えば、本店は「長浜」にありましたが、支店は「港」にあるので、長浜という住所にある元祖長浜屋ラーメンという意味では、本店のほうが正確な元祖長浜屋ラーメンでした。本店と支店を比べると、支店のほうが通りに面していて駐車場もあって、本店は道を入ったところにあって駐車場もなかったので、現在ある支店のほうを本店だと思っていた人も多かったです。
下の写真は、元祖長浜屋のラーメン(ベタナマのネギダク)です。

本店は、今の支店にある食券制ではありませんでした。本店に入ると「いっぱーい」という声が聞こえて、ラーメンが運ばれてくる自動オーダー制になっていました。本店に入る前にはどういうラーメンを注文するかを自分で決めてから、入ると同時にその注文内容を店員たちに知らせる仕組みになっていました。「ベタナマー」とかの声を出して、本店内に入ってくる人たちがいました。本当に長浜ラーメンらしい雰囲気のある店は、元祖長浜屋の本店でした。
今の支店は食券制になっていますが、「ベタナマ」とかの声を出してから入るとその注文が入る仕組みは同じです。着席してからでは遅いので、店内に入ったと同時「ベタナマ」などと声を出して注文します。何も言わなければ通常のラーメンが出てきますので、それでよければ何も言う必要はありません。ラーメンの具は、ネギとチャーシューの肉だけです。
ベタとは油が多めでちょいベタが普通よりも油が多め、ナシは油なしです。バリヤワ、ヤワ、カタ、バリカタ、ナマの順に麺が硬くなっていきます。麺の硬さは他にも、ヤワよりももっとヤワいズンや、ナマよりももっと硬いカキなどもありますが、通常はヤワからナマまでを使います。硬麺の粉落としやハリガネも、通常は使いません。
「ベタナマ」は、油が多めのかなり硬い麺のことです。「ナシヤワ」は、油がないでヤワい麺のことです。油の量の次に麺の硬さを言うようになっていますので、「ナマベタ」ではなくて、「ベタナマ」です。「ネギダク」「ネギ盛り」「ネギ多め」などと言って、ネギを追加する人たちもいます。「ベタナマネギ盛り」などと言います。
ネギなしもできますし、肉なしもできます。ネギも肉もいらない場合には、素(す)と言います。「ナシヤワの素で」と言います。替玉をする時には「ナマたま」などと言いますが、普通に「替玉をナマでお願いします」などでも大丈夫です。替玉の食券を買っていなくても、店員たちが替玉を持ってきた時にその替玉分の値段を手渡しするなり、赤い円卓の上に置いておけばいいです。麺の量が多いのなら、半分の替玉を頼むこともできます。「ナマタマを半分で」などと言います。
肉の大盛りはできませんので、あらかじめ替肉の皿を頼んでおきます。替肉は、皿で持ってきます。こうやって自分に合った自分流のラーメンの注文をして、店員に覚えられる常連になって自動的にその注文が入るようになると、元祖長浜屋通になります。
もっとベタナマネギダクのラーメンに近づいてみました。

店内では、相席になった人たちと大きな赤い円卓を囲んで食べます。赤い円卓の上には、ラーメンのタレが入った銀色の小さなやかんとお茶が入った金色の大きなやかん、大きな青いザルに入ったお茶入れと中が透けた白い円柱のタッパに入っているゴマ、割箸が突き刺さって紅しょうが入っている容器と胡椒入れ、割箸と爪楊枝があります。お茶でなくて、入り口の近くに水の給水機もあります。お茶も水も自分で注ぎます。ラーメンのスープが入っている銀色のやかんを、お茶と間違えて注いで飲む人もいます。
元祖長浜屋は博多のソウルフードと言われることもありますが、正確な住所で言えば博多ではありません。元祖長浜屋には「博多らしさ」がある「博多らしいソウルフード」という意味で、博多のソウルフードと言われているのだと思います。その博多らしさは、本店の自動オーダー制や、店内に入ると同時に「ベタナマ」などと言って自分で注文を決めることにもあります。
その他の「博多らしさ」は、元祖長浜屋の雰囲気にあります。屋台の延長のような雰囲気、同じ釜の飯を食らうような雰囲気、食べたらサッと店を出て行く「粋」のある雰囲気(常連になるとその雰囲気の中の片隅で、焼酎などを飲む姿が絵になる親父さんもいました)、それに店内に入ると同時に自分流の注文をする人たちの雰囲気が合わさって、それらの雰囲気が「博多らしさ」をつくりだしているのだと思います。
福岡市のソウルフードとか三大B級グルメとか言われるものに、元祖長浜屋のラーメンと牧のうどんとふきやのお好み焼きがあります。
元祖長浜屋に何度も食べに行く人たちは、この元祖長浜屋の独特の雰囲気の中でラーメンを食べるのを楽しみにしている人たちで、単にラーメンを食べたいというだけではないと思います。その意味で、元祖長浜屋でラーメンを食べるのは、「元祖長浜屋というラーメンを食べる」ようなものだと思います。
下の写真は、元祖長浜屋の外観です。

元祖長浜屋には、ラーメン二郎のジロリアンが「二郎はラーメンではなく二郎という食べ物なのだ」と言うように、「元祖長浜屋はラーメンではなく元祖長浜屋という食べ物なのだ」という性格がかなりあります。元祖長浜屋が替玉発祥の店で創業年がラーメン二郎よりも早いことも考えれば、ラーメン二郎よりもその性格が強いのではないかと思います。
その性格の強さをあらわしているのは、元祖長浜屋の常連の人たちがそのラーメンの味をあまり気にせずに、その味にブレがあるのは当たり前、あるいは仕方がないと思っているところにもあります。はっきり言って、元祖長浜屋はラーメンの味だけで考えると美味い店とは言えません。観光客の人たちが、ラーメンが美味しいからと思って元祖長浜屋に行くのなら、その味にがっかりすることもあると思います。他にも美味しいラーメン屋はあるので、味だけで言うのなら、それらの店に行ったほうがいいと思います。
元祖長浜屋のラーメンの魅力を短く言いあらわせば、以前のキューサイ青汁のCMで八名信夫さんが言っていた「う~ん、まずい!もう一杯!」に近いと言っても過言ではないと思います。「元祖長浜屋のラーメンは、まずい。しかし、元祖長浜屋のラーメンを食べ続ける」という、ある種の倒錯した行動に向かわせる不思議な魅力が元祖長浜屋にはあります。実際には、元祖長浜屋のラーメンは平均してまずくはないと思いますが、まずい時があっても行く価値が十分にある店ということです。
本当に毎回まずければ、行く気も失せます。たまに、ものすごくうまい時があります。もともと元祖長浜屋は、腹を空かした魚市場の人たちがサッと食べられるようにという性格がありました。そのために、早朝の時間帯がうまいと言われていました。実際に、本店で早朝に食べるラーメンは、特にうまい時がありました。
違う視点から見てみました。

長浜ラーメンは豚骨だから味は濃い目だろうと思っている人たちは、元祖長浜屋のスープの味の薄さにびっくりすると思います。濃厚な豚骨ラーメンは長浜ラーメンでもなく、博多ラーメンでもなく、久留米ラーメンのことです。福岡市内のラーメン屋の豚骨ラーメンは、全般的にあっさりしています。「豚骨ラーメンは豚骨臭くて、濃厚なラーメンのことだ」というのは、博多ラーメンや長浜ラーメンには当てはまりません。もちろん、福岡市内にも濃厚なラーメン屋はありますし、その濃厚さで人気になっているラーメン屋もあります。
元祖長浜屋は、ラーメンが一杯400円で替玉と替肉が50円で、500円あれば腹一杯になることから、500円のワンコインでラーメンが食べられる店が福岡のラーメン屋と言われることがありました。元祖長浜屋はラーメンの麺の量が一般のラーメン屋よりもかなり多いので、ラーメン一杯と替玉二回の500円で腹一杯になりました。今は、替玉と替肉が100円になりました。ラーメンの400円は同じ値段です。
元祖長浜屋のメニューは、ラーメンが400円、替え玉と替え肉が100円、焼酎が200円、酒が350円、ビールが400円です。
元祖長浜屋に初めて行った人が戸惑うことに、店員の接客姿勢があります。まるで客を客と思っていないのが、元祖長浜屋の店員でした。そこには、「お客様は神様」と考えての接客姿勢は、毛頭もありませんでした。これに「ふざけるな」と言う人たちは、元祖長浜屋は合わないと思います(※ 店員が入れ替わったために、最近は変わってきました)。
こういう店員の姿勢は、もともと元祖長浜屋が魚市場の人たちがサッと食べて帰っていくために利用する店であったというその性格にあると思います。そこには、そういう「同じ釜の飯を食らう」的な仲間意識のようなものがあって、それが店員たちの接客姿勢にもあらわれていたのではないかと思います。
「元祖長浜屋らしさ」には以上のような性格がありますが、もともと「サッと食べて帰っていく客たち」という面があるので、洒落た店よりもそういう性格のほうがいいという人たちには、昭和的な雰囲気も合わさって元祖長浜屋には行ってみる価値があると思います。
博多や長浜のラーメン文化に興味がある人は、是非ともというよりも、絶対に行っておくべき店が元祖長浜屋です(現在は、元祖ラーメン長浜家があるので、長浜家でもいいと思います)。元祖長浜屋にラーメンを食べに行くのは、ただそこにあるラーメンを食べるというだけではなく、元祖長浜屋というラーメン文化の雰囲気の中で、その文化を味わうためのものでもありますから。
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