共産党と社民党議員の「自由」の問題

特にウェブ上では、児童ポルノ法案の問題がよく言われている。その中で、「自由を尊重する社民党と共産党」「エロに寛容な社民党と共産党」などと言って、社会民主党と日本共産党を支持するという者たちがいる。しかし、社民党と共産党の議員はエロの自由を尊重するわけでもないし、自由を制限する側であって、よく批判されるキャサリン・マッキノンやポルノ・買春問題研究会(APP研)と通じることを言っている。

ポルノ・買春問題研究会やキャサリン・マッキノンは売買春の問題をよく言っているが、成人の売春者を成人が買春することに対しても刑事処罰化することを言っている。相当の理由がない限りは国家権力は成人同士の法律行為を処罰化してはいけないし、それは売買春に関してもそうだ。

売買春で言われるセックスワーク論は、性的労働を労働として認めて当事者同士の自由意志を尊重するべきであるというものだ。しかしそのセックスワーク論以前の問題として、成人同士の法律行為に国家権力が介入してきて刑事処罰まですることに最大の問題がある。国家権力の問題を主張する者たちは、国家権力が成人同士の法律行為に介入してくるその段階で権力に対峙して主張しないといけないのに、そこから国家権力の刑事処罰まで認めてしまうのなら、何らの「反権力」でもない。

その意味での何らの「反権力」でもないただの偽善の反権力の言説を、国家権力と対峙しているはずの共産党の国会議員が言っている。共産党の吉井英勝は、2005年10月14日の「163国会 衆院内閣委員会」で当時の国務大臣である自民党の村田吉隆に以下のことを言っている。

吉井英勝 1014_会議録全文

http://www.441-h.com/hotnews/kokkai/05/1014a_zenbun.htm

 売春というのは大きな人権侵害ですが、売春防止法では買う方の買春者は罪に問われない、禁止を規定しているが罰則はない。これでは売春撲滅という目的達成はできないわけですから、やはり売春を必要悪として買春はとがめないという風潮があってはとんでもないわけで、人身売買罪の制定をきっかけに、買春に刑罰を科すことで性的搾取の最たる売春を撲滅、一掃するという取り組みを、これは大臣、あなたが法務大臣の所管までというふうに私は言っていないけれども、やはり内閣を挙げてそのことにきちっと対処していく、そのことをやらないと、私は本格的な解決というのはなかなか進まないと思うんです。これは、大臣に伺っておきます。

http://www.441-h.com/hotnews/kokkai/05/1014a_zenbun.htm

買春についてもきちんとした、相手が児童ということだけじゃなしに、そこに処罰を含めてきちっと対応するということをしないと、幾ら警察の方が風営法を改正して一生懸命取り組んでいるといっても、これは根本的になかなか解決しない。

吉井英勝は「相手が児童ということだけじゃなしに」と言っているので、成人の売春者を買春する者に対しても、刑事処罰をしろと言っている。

吉井英勝はそこで、「買春という行為は、これは人身売買そのもの」とも言っている。この考えは、キャサリン・マッキノン『キャサリン・マッキノンと語る―ポルノグラフィと売買春』ポルノ・買春問題研究会翻訳/編集(不磨書房)でキャサリン・マッキノンが「すべての売買春はレイプの一形態である」と言っていることに通じる思想だ。ポルノ・買春問題研究会は児童ポルノ法案の問題でも特にその言説に批判が集まっているが、吉井英勝が考える「自由」は、成人同士の売買春でさえも認めない。

成人の売買春での法律行為にも国家権力の介入を許して刑事処罰化をすることを主張する吉井英勝が所属する日本共産党が、エロに寛容であるというのはお笑いでしかないし、共産主義と自由の尊重は相容れない。児童ポルノ法案で共産党を支持すると言っている者たちは、吉井英勝の言っていることと、ポルノ・買春問題研究会の言っていることが通じることはどう思っているのだろうか。成人の売買春も認めないで「清い性道徳」を求めるのは、統一教会の純潔キャンディーを思わせる。

『岩波 女性学事典』(岩波書店)の「買春規制」の項目に、福島瑞穂は以下の文章を書いている。

売春ではなく買春を規制しようということ.(中略)大人に対する買春については,スウェーデンが98年,金銭による一時的な性的関係を取得する者は,金銭による性的サービス取得の罪により処罰されるとして,売春を処罰せず,買春のみを処罰するようにした.これは,買春規制として大いに注目すべきである.

「大人に対する買春」は、成人の売春者を成人が買春することを規制して刑事処罰化することだ。成人同士の売買春を刑事処罰化するのは、統一教会の純潔キャンディーにも通じる「清い性道徳」のありようを求める者たちと思想が一致する点がある。

ポルノ・買春問題研究会や純潔キャンディーを思わせることを言っている共産党議員や社民党議員を見ると、その両党がエロに寛容で自由を尊重する党であるというのはとても言えない。

反省の女性学とはに、当サイトの反省の女性学の趣旨を書いています。

2010年6月掲載



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